CPD・CPDS

1.CPDとは

CPDは「Continuing Professional Development」の略称で、技術士や建築士・建築施工管理技士・土木施工管理技士などの資格者が継続的に技術の向上を図っていくための継続教育制度です。このCPD制度の実施の背景には、それぞれ技術者であれば技術者として「自己の能力開発を続けていかなければならない」という努力義務があることが挙げられます。そしてその努力義務を果たすべく自主研鑽をしているどうかというのは、第三者から見ても分かりません。それを可視化するのがCPDの単位ということになります。つまり、自身の保有しているCPD単位は自主研鑽の証、ということになります。
更新制度のない資格もあるため、資格によっては自己研鑽を怠る技術者が生じます。CPD制度は、継続的に自己研鑽を行っている技術者とそうでない技術者とを区別する制度ともいえ、現在多数の行政機関が、建設工事の入札などでCPD単位を加点等評価の対象にしています。
業務の国際化や雇用情勢の変化などにより、技術者の継続教育の必要性が叫ばれるようになってきています。高度化・多様化した社会において、新たな問題や課題に対して的確に応えるためには、専門分野以外にも幅広い領域において深い技術の習得が必要になります。それらに対応するために、多数の継続教育プログラムの中から自身が必要とするプログラムを選択し、必要な技術力の向上を図る必要があります。

2.建設系CPD協議会

CPDは、建設系CPD協議会により運用されており、主な加盟団体は以下になります。

  • 公益社団法人 空気調和・衛生工学会
  • 一般財団法人 建設業振興基金
  • 一般社団法人 建設コンサルタンツ協会
  • 一般社団法人 交通工学研究会
  • 公益社団法人 地盤工学会
  • 公益社団法人 森林・自然環境技術教育研究センター
  • 公益社団法人 全国上下水道コンサルタント協会
  • 一般社団法人 全国測量設計業協会連合会
  • 一般社団法人 全国土木施工管理技士会連合会
  • 一般社団法人 全日本建設技術協会
  • 土質・地質技術者生涯学習協議会
  • 公益社団法人 土木学会
  • 一般社団法人 日本環境アセスメント協会
  • 公益社団法人 日本技術士会
  • 公益社団法人 日本建築士会連合会
  • 公益社団法人 日本コンクリート工学会
  • 公益社団法人 日本造園学会
  • 公益社団法人 日本都市計画学会
  • 公益社団法人 農業農村工学会

各加盟団体が認定するセミナーや講習会の受講実績が「CPD単位」として認定され、受講者の技術向上に対する実績を対外的に証明可能にする仕組みで、技術士や建築士・建築施工管理技士・土木施工管理技士などの資格取得者であれば、誰でも参加できます。また、「CPD単位」の取得は、受講者以外にも、受講者が所属する建設会社・設備会社などにもメリットをもたらします。

3.企業としてのメリット

(1)個人のスキルアップ

個人のスキルアップを図る場として、主に施工5大管理といわれる工程管理・品質管理・安全管理・原価管理・環境管理に関する最新情報や最新技術・工法などを学習する機会は重要です。特に企業内研修が整っていない会社にとっては、CPD制度は有効な学習の場となり得るでしょう。また、経営者側としても社内教育に重点を置きたい要望がある際、人材不足などで教育できる社員がいない場合にCPD制度の活用は良策と言えます。

(2)他との違いを認識

日々の業務において、自社の方法に精通できたとしても他の方法はどうなのかを知る機会は一般的にありません。そのような際にCPD制度を活用することで他の技術者との交流をもつ機会ができ、別の方法や技術レベルなどを把握することができるとともに、自社や自身の技術レベルを相対的に把握することができます。
場合によっては自社や自身の技術レベルの低さに気づくことができ、自己研鑽の必要性を痛感し、モチベーションアップにつながることもあります。したがって、自身の技術レベルを相対的に把握することは今後の将来設計にも影響を与えるため、大変重要と言えます。

(3)個人のキャリアアップ

建設業界においては、慢性的な人手不足や高齢化が進行しています。それらの世代間ギャップなどに伴い、専門技術の継承という点では恵まれない若手技術者も多く、業務が滞る事態にもなり兼ねない状況です。
CPD制度を活用することにより、建設業界におけるキャリア形成の内容を知ることができ、将来を具体的にイメージすることが可能となります。CPD制度は将来設計を立案することができ、キャリア形成に貢献できる制度と言えます。

4.CPDとCPDSの違い

CPDの他にCPDS(Continuing Professional Development System)があります。CPDとCPDSの違いは運営団体の違いになり、それぞれの運営団体は以下になります。

  • CPD:建設系CPD協議会
  • CPDS:一般社団法人全国土木施工管理技士会連合会(以下、全国技士会)

全国技士会とは、都道府県にある土木施工管理技士会や橋梁建設・塗装・現場技術を専門とした技士会など、合計50の技士会から成る連合体を指します。ただし、全国技士会は建設系CPD協議会に加盟している団体であるため、他の加盟団体の登録者であっても、全国技士会のセミナーや講習受講証明書の発行により加盟団体のユニット登録申請が可能となっています。
CPDとCPDSの内容の違いはほぼありませんが、CPDSは土木施工管理技士の専門知識や技術力・倫理観の向上を図る目的の教育システムとなっています。

5.まとめ

技術者は、努力義務として自己研鑽が規定されている以上、日々の努力が大事です。CPD制度は技術者の継続教育制度であり、CPD単位を取得することにより自身のスキルアップを図ることができます。それにより自己研鑽の努力を可視化し、社会に対する客観的な評価とすることができます。
また、勤務先企業の持ち点にも加算され、公共工事の落札に対して有利にはたらくとともに自身のキャリアアップや他社との相対的な技術力の把握にも役立つ制度であるため、今後益々ニーズは高まるものと想定できますので、積極的にCPD制度を活用していくことが重要です。